セサミ色々日記

雑談に変更

ブログ引越し②:トラルファマドールをぶっ飛ばせ!

今更ですが、新年明けましておめでとうございます。今年は新年のごあいさつがきちんと書けなかったので、それに代えて、昔のブログを載せます。8年も前のものだけど、基本的な姿勢は変わってないと思う、多分。ていうか、あまり進歩ないのかな・・・。いやいや、今年はセサミチャレンジ開催、頑張りマス。ではでは。

 

2011年12月31日:2012年のごあいさつ:その①:シュレディンガーのアメーバ

 

では、なにが重要に思えるのか?
運命と真剣に取り組むことである。
カート・ヴォネガットスラップスティック』より)


 カート・ヴォネガットというアメリカの作家の『スローターハウス5』という小説に、トラルファマドール星人という異星人が出てきます。
 この異星人は4次元的な視覚を持ち、「彼らの眼には、人間は長大なヤスデ―「一端に赤んぼうの足があり、他端に老人の足がある」ヤスデのように見える」そうです。
 3次元的な視覚しか持たない地球人は、現在の姿しか見ることができませんが、トラルファマドール星人の眼には、赤ちゃんから老人までの一生の姿が、お正月に上げられるムカデ凧みたいに、ずらずらと連なって見えるそうです。

 「あらゆる瞬間は、過去、現在、未来を問わず、常に存在してきたのだし、常に存在しつづけるのである。たとえばトラルファマドール星人は、ちょうどわれわれがロッキー山脈をながめると同じように、あらゆる異なる瞬間を一望のうちにおさめることができる。彼らにとっては、あらゆる瞬間が不滅であり、彼らはそのひとつひとつを興味のおもむくままにとりだし、ながめることができるのである。一瞬一瞬は数珠のように画一的につながったもので、いったん過ぎ去った瞬間は二度ともどってこないという、われわれ地球人の現実認識は錯覚にすぎない。」

 ということは、トラルファマドール星人には、私の過去の姿はもちろんのこと、未来の姿もすべてわかってしまっていえることになり、未来は超越的存在によってあらかじめ定められているという宿命論に従うことになりますよね。

 宿命論といえば、4年ほど前、私は、知合いの占い師Gさんに、「50歳になったら良いことがあるよ」と言われました。
 私は占いなんて信じてませんでした。だって、さそり座の人が全員、毎日同じ運勢を辿るなんて、どう考えたって変でしょ。たまたま引いた紙切れや棒で(※おみくじのことです)、私の何がわかるっていうの? 手のしわなんかで、運命が決められてたまるか、けっ!と思いながらずっと生きてきました。

 ところが、Gさんは、占い師といってもタロットや水晶や手相や、そういった物は何も使いません。誰かが普通に「占ってちょうだい」って頼んでも、相手にせず、にこにこ笑っているだけです。
 しかし、ある時、私の知人が、仕事のため車で出かけようとしていた時に、「絶対そっちの方面には行くな。事故に遭ってしまう。どうしても行くのだったら、絶対右側のシートには座るな、死にたくなかったら左側に座れ」みたいなことを、Gさんから突然電話で言われたそうなんです。で、その人は結局車で出かけたのですが、別の車に追突され、右側に座っていたらやばかったけど、左側に座っていたために大怪我で済んだのです。
 信じられないけど、Gさんはそういうことを時々言って当ててしまうんです。騙されてる訳じゃなくて本当に。Gさんのもとには、ちょくちょく、お偉いさんみたいな人達がひっそりと相談に来るそうです。

 それでも、頑固な私は通常だったら、そんなこと偶然に決まってるよ、と信じなかったと思います。が、たまたま当時、個人的に結構きついことがあり、気持ちが弱っていたので、ちょこっと信じてしまいました。

 で、私は、「50歳まで待つのなんてやだ! 占いやり直し! 長くても2年後位までの間に良いことがあるようにしてくれなきゃダメ!」と詰め寄ったのですが、彼は最後まで「50歳になったら良いことがある」の一点張りでした。えーー、だったら50歳までの数年間、私はどう過ごせばいいいの?
 
 ところで、Gさんの占いが本当かどうかの真偽はさておき、もし本当だと仮定した場合、未来は決まっていることになるのでしょうか? 事故で大怪我をした知人の例で考えてみると、彼の未来は、右側に座った場合と左側に座った場合の、2通りがあることになりますよね。ということは、現時点において未来は決定しておらず、選択の余地があることになります。
 2か月程前、中1の生徒さんが、量子力学の『シュレディンガーの猫』の仮想実験について質問をしてきたのですが、これにちょっと似ているなって思いました。椎木一夫氏の『シュレ猫と探索する量子力学の世界』という本に、わかりやすい説明が載っていたので、これを引用させてください。ただ、私は猫が大好きで、猫を例にされると辛くなってしまうので、猫の代わりにアメーバ(※なんじゃ、そりゃ?)を代入して書かせてください。

 まず、中身が見えない大きな箱を用意します。次に、この中に、放射線を出す物質、たとえばラジウムのような物質と、放射能を検出するガイガー計数管のような検知器を入れます。ここで、1時間たったときに放射線が出る確率は1/2であるとしましょう。(中略)
 なお、検知器が放射能を検出すると、金づちが青酸カリの入ったビンをたたき割るようにしておきます。ビンから出てくる青酸ガスの量は一瞬でアメーバを殺すのに十分な量です。
 最後にアメーバを入れて箱のふたをします。1時間たったときに、このアメーバは死んでいるか生きているか、どうでしょうか。1時間たってふたを開けてみれば、答えはわかります。10000回実験を繰り返せば、生きているのは半分の約5000回で、死んでいるのは残りの半分です。
 ここで、シュレディンガーが問題にしたのは、1時間たって、ふたを開ける直前のアメーバの状態です。ボーアたちの解釈にしたがえば、この状態は、アメーバが生きている状態と死んでいる状態が重ね合わせられた状態です。ふたを開けた瞬間に、生きているか、死んでいるか、どちらかの状態に「波束の収縮」が起こり、どちらかに決まることになります。しかし、アメーバは生きているか、死んでいるか、どちらかの状態のはずで、「半死半生」の状態なんて、あり得ません。これがシュレディンガーが問題にしたところです。
 

 この問題に対する明確な解答はまだ出ていないそうです。分かった人は、教えてください。(つづく)

【参考文献】
カート・ヴォネガット著、浅倉久志
 『スラップスティック早川書房、1983
カート・ヴォネガット著、伊藤典夫
 『スローターハウス5早川書房、1991(第14版)
・椎木一夫著『シュレ猫と探索する量子力学の世界』
 日本実業出版社、2003

 

2012年1月1日:2012年のごあいさつ:その②:トラルファマドールをぶっ飛ばせ!

 

踏み出すその一歩が君が下すジャッジさ
歩幅なんかは気にしないでいい
ぶっ飛ばすから(中略)

情熱の羅針盤は 未来をいつも指している
ほつれる蜘蛛の糸
切れそうでも つたって行く

情熱の羅針盤は 君の胸にはありますか?
その針震えて
クルっと廻って未来を指す

ASIAN KUNG-FU GENERATION羅針盤』 作詞:後藤正文


 昨年の11月末で、セサミ数学スクールは、無事1周年を迎えることができました。ありがとうございます。1周年記念イベントの江の島遠足には、総勢17名も集まってくれました。本当にありがとうございました。

 昨年末、町田市の商工会議所に相談の電話をしたところ、商工会議所の方が、わざわざ当スクールを訪ねてきてくださいました。このスクールの住所を聞いて驚いたそうです。大手でもない、大手の傘下に入っているわけでもない、チェーンでもない、コネも後ろ盾も実績も何にもない、ゼロから出発した塾が、駅近くの塾の超激戦区で、1年以上も続けられるなんてすごい、とおっしゃってくださいました。
 うれしかったです。もしも私が犬だったら、ちぎれんばかりにしっぽを振りまわし、教室中を跳び回っていたと思います。

 これもひとえに、人間のできたすごい生徒さん達が集まってくれたおかげです。1年前の今日には、算数オリンピッククラスや、先取クラスが開講できているとは、夢にも思いませんでした。生徒さん達の能力に応じて、セサミが発展してしまったという感じです。本当にありがたく思います。

 また、個性的で賢く信頼のおける講師達にも恵まれ、何とかここまでやってくることができました。どんな毒舌を言われようとも(約1名)、メキシコまでUFOを追っかけて行ってしまっても(約2名)、感謝してます。
 人身事故で電車が遅れ、たまたま携帯を持ってなくて連絡ができず、教室に着くのが30分遅くなっただけで、拉致・誘拐・殺人未遂(?)事件と勘違いしてくれ、わざわざ交番まで届け出に行ってくれて、ありがとう。笑いが止まりませんでした。一杯感謝してます。

 私はあまり賢くありません。社会人としての風格も落ち着きも品格もマナーもなく、代わりに、抜け目やそつや手抜かりなら、目一杯あります、しくしく。常識にも欠けている気が、ちょっとします。しかし、それらを逆手にこれからも、今までになかったようなスクールを目指して、進んで行きたいです。

 Gさんが、50歳になったら良いことがある、って言ってくれたのは、50歳になるまでは、何が何でもこのスクールを続けていくように、というメッセージだと勝手に解釈することにしました。

 未来はどうなっているか、という説をいくら持ち出したって、結局のところ、少なくとも私には、現時点しか感知できないのだから、現時点で頑張るしかないんだ。
 現時点での一歩一歩の歩みが、未来へのベクトルを作り上げていくのだと、私は信じている。
 いや、未来だけじゃない、過去すらも作り上げていけると思う。過去の事実は変えられないけれど、過去の持つ意味合いは、現時点及びこの先の己の行為によって、いかようにも変えていけると、私は信じている。

 トラルファマドール星なんてぶっ飛ばしちゃえばいい。トラルファマドール星人の見るムカデ凧の姿なんて、吹き飛ばしちゃえばいい。

 様々な生徒さんたちの、現時点のみの姿を眼の前にして、私は未来を夢見る。

 セサミ数学スクールで学んだことが、生徒さん達の各々の輝く未来を作り上げるベクトルに、少しでも役立つことができるのならば、これに勝る喜びはありません。

 今年もどうかよろしくお願いいたします。
 セサミ数学スクール 及川えり子