セサミ読書日記

本の紹介など

ミツバチと虫クンとダーウィンとカンデルと:前半

ダーウィンにとって、反応を調整できる能力は、「なんらかの精神の存在」を示唆していた。(中略)

「もしミミズが・・・穴の口の近くにある物体を引き寄せ、どうすればそれをいちばんうまく引きづり込めるか判断できるなら、全体の形のイメージをつかんでいるはずだ」

「そのときミミズは、同じような状況下の人間とほぼおなじやり方で行動するのだから、知能があると呼ぶに値する」

オリヴァー・サックス著『意識の川をゆく:脳神経科医が探る「心」の起源』より)

植物もミミズも、精神生活というほどのものを持つはずはない。それが大方の常識だが、「意識」という主題を真面目に考えると、簡単にそうは言えないことに気づくはずである。森山徹『ダンゴムシに心はあるのか』をお読みになったことがあるだろうか。意識の起源に関しては、生命の始まりから、すでにその萌芽があるのではないかとする、哲学的な立場もあるくらいである。

養老孟司、『意識の川をゆく』の解説より)

ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学 (PHPサイエンス・ワールド新書)

ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学 (PHPサイエンス・ワールド新書)

 

セサミには『虫クン』という生徒さんがいます。虫に非常に詳しいので、『さかなクン』に真似て『虫クン』というニックネームが付けられました。

どれくらい詳しいのかといいますと、一例を挙げると、青梅埠頭でヒアリが見つかったというニュースについて聞いてみると、

「日本の○○○(※虫の名前だけど忘れた)は強いからヒアリを退治してくれるので大丈夫だと思いますよ」

と、ニュースで見たことも聞いたこともない専門知識で答えてくれるし、「昨日枯葉みたいな変な蛾みたいのが入ってきたんだよ」と言うと、

「ああ、◇◇◇(※虫の名前だけど忘れた)ですね。線路沿いに△△(※植物の名前だけど忘れた)が生えていて、その葉を食べているから、ここに迷い込んだんじゃないですか」
と、即座に答えてくれるのです。その他諸々とにかくすごい。

という訳で、今回は環境問題ではなくて虫の話になりますすみませんどうしても書きたいの。

ミツバチの天敵でオオスズメバチというハチがいます。ウィキペディアによると、オオスズメバチは「日本に生息するハチ類の中で最も協力な毒を持ち、かつ攻撃性も高い非常に危険な種」だそうです。ミツバチの体重は100mg以下、一方オオスズメバチの体重は3000mg以上と、体重にして30倍以上です。ミツバチを体重50kgの人間とすると、オオスズメバチは体重1500kgの人間に匹敵するのです。こわいっす。ミツバチの針でオオスズメバチを刺しても、針が小さくて弱いため、オオスズメバチを刺すことすらできません。

オオスズメバチがミツバチの巣を見つけると中に進入し、フェロモンで仲間を呼び寄せます。フェロモンというのは昆虫類が仲間に情報伝達をするときに用いる化学物質です。人間は専ら言葉で情報伝達をしますが、昆虫類はもっぱら、言葉ではなくて化学物質で情報伝達します。

フェロモンが他のオオスズメバチに届き、数十匹のオオスズメバチが巣に進入すれば、巣にいる何万匹のミツバチは絶滅してしまいます。

そこで、ミツバチたちは、下の動画にあるように、体温を上げてオオスズメバチを取り囲みます。オオスズメバチは温度が約45度を超えると死んでしまうそうですが、ミツバチは50度まで耐えることができます。そこで、大勢でオオスズメバチを取り囲み、体温を48度まで上げて、オオスズメバチを殺すそうです。この方法を『熱殺蜂球』と呼ぶそうです。


オオスズメバチ vs ニホンミツバチ Giant Hornet vs Japanese honeybee


スズメバチを撃退するニホンミツバチ

先日夜中に、eテレの『ヘウレーカ』という番組で、ミツバチの『熱殺蜂球』をやっていました。研究者が、オオスズメバチの体に針金を巻き付け(その針金の端は研究者が持っています)、オオスズメバチをミツバチの巣の中に入れて、熱殺蜂球を作らせていました。又吉氏の手の上に熱殺蜂球をそっと乗せて高温を体感させていました。

これちょっとかわいそうなのは、体に針金を巻きつけられたオオスズメバチはもちろん、最初に突撃していくミツバチたち数十匹も死んでしまうのです。(ちなみに上記の映像はどちらも、ヘウレーカのではないです、一応参考までに)

 

テレビを見た翌日、たまたま虫クンが授業に来ていたので、見た内容を告げると、虫クンは怒っていました。

なんでわざわざ実験をして、不必要に蜂たちを殺すのですか。自然界の映像を見せれば十分じゃないですか、それで十分に伝わるじゃないですか。わざわざ殺すことないじゃないですか。

と。しかも実験に使われていたのは、希少なニホンミツバチであったこともあり、虫クンは怒っていました。でもまぁハチだし、と私が言うと、虫クンはこう言いました。

じゃあ先生は、実験という名目で、飢えた肉食獣やカラスがいる中に、子○コを入れてもいいと思いますか。同じことじゃないですか。

ぎゃーーー、だめーーー、やめてニャーーー、すみません私がまちがっていましたごめんなさいごめんなさい、だから絶対にそんな実験しないで~~~!

 

研究者には、動物や虫が本当に本当に好きな場合と、動物や虫を単なる研究対象と捉えている場合の、2種類があるように思います。熱殺蜂球の研究者は後者なのだと思いました。前者だったら、虫クンのように考えて行動するのではないでしょうか。

虫クンは虫が大好きですが、あまり擬人化をしたり、意図的に虫の感情を読み取ったりすることはありません。

虫って何考えてるの?感情あるの?と私はよく質問するのですが、いや~、怒りの感情はあるけれどあまり感情とかないんじゃないですか、といつも答えます。

しかし、そんな冷静な虫クンが、ふとこんなことを言っていました。

ミツバチは仲間が死ぬと、巣の周りでしばらく茫然としているんです。僕見たことがあります。仲間が死んでしまったことがわかっているんじゃないかなって思うんですよ。

そのセリフを聞いて、私は色々と考え込んでしまいました。

ミツバチの熱殺蜂球については、その行動をもたらす脳の部位や遺伝子に関する研究は行われています。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/5794/

しかし私は一方で、前回紹介したオリバー・サックスの著書に書いてあったようなことも、考えてしまうのです。

昆虫には最高100万個の神経細胞がある。そのすべてがひとつの脳に集中している昆虫は、サイズはとても小さいが、並外れた認知的妙技をやってのけられる。だからミツバチは、実験室で異なる色、におい、幾何学図形と、さらにその体系的変化を識別する名人なのだ。そしてもちろん、野原や庭では超一流の専門技能を発揮し、花の模様、におい、色を識別するだけでなく、その場所を記憶して、仲間のハチに伝えることもできる。

さらに、高度に社会的な種であるアシナガバチでは、個体がほかのハチの顔を覚えて識別できることも示されている。(中略)

私たちは昆虫をしばしば、とても小さなオートマタ(※及川注:生命を単なる機械のようなものと捉えること)――すべてが組み込まれてプログラムされているロボットーーと考える。しかし、昆虫は記憶、学習、思考、コミュニケーションをじつにさまざまな予想外の方法で行えることが、次第に明らかになっている。その多くはたしかに組み込み済みのものだが、個々の経験に左右されるように思えるものも多い。

オリヴァー・サックス著『意識の川をゆく』より)

意識の川をゆく: 脳神経科医が探る「心」の起源

意識の川をゆく: 脳神経科医が探る「心」の起源

 

人間以外の生物、動物や昆虫などに、精神的なものの存在を認めようと考えることは、現代社会ではオカルティックで怪しいものと思われてしまう傾向が強いように思います。しかし、進化論の観点から考えると、人間は動物の延長線上にあるにすぎず、神経細胞の構造は昆虫も動物も人も同一であるし、人間や他の哺乳類の脳の構造は非常に類似していることを考えると、人間だけを特別な存在として考えることの方が非科学的であると私は考えています。

自然の中において人間だけを特別と考えるのは、西洋のキリスト教的な世界観に基づくものであり、それが現代科学をある種歪めてしまっている側面もあるように思うのです。人間を特別な存在と考えることが、他の動物や昆虫などを単なる研究対象、実験材料、感情を持たず本能や反射のみで生きているものとして扱うこと、と繋がるように思うのです。

こういった事柄に関し、進化論で有名なチャールズ・ダーウィンや、2000年にノーベル生理学・医学賞を受賞したエリック・カンデル氏や、前回紹介した『火星の人類学者』に出てくる動物学者テンプル・グランディン氏の著書について書いてまとめたいと思っていたのですが、長すぎたので、次回(※本当に次回)後半を書きます。

 

このブログで最初に書いた植物のことも、この前の環境のことも、今回のこともてんでバラバラのことが全部中途半端なままになっていてすみません。実はこれらの事柄は、私の中では一つに繋がっているのです。しかしそれらを系統立ててきちんとした形で書くことができるほどの知識や思考が、私にはまだ備わっていなくて、書きながら考えならば本を読みながら調べながら、少しずつ少しずつ形にしていければと思います。

ごちゃごちゃしててごめんなさい。

次回は虫の話の続き、その次は環境問題について書いていき、植物についての知識や考えがある程度まとまったら、その続きを書いていきます。